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赤い狐(J級突撃艇奮戦記)第1話投稿日 : 99年5月25日

「こちら,ミルバ艦隊所属『ゲパルト』,第6ゲート応答願います………」
副操縦士は必死に呼びかけていた。しかし,結局応答は返っては来なかった。
「やはり通信装置にも損傷を受けてるのか?」
艇長のニールス・バッケ大尉が恨めしそうに訊ねる。
「いえ,艇長。通信機には異常はありません。問題は要塞の受信機のようです。
せめて,これが響導艇搭載の高機能タイプ通信機なら要塞守備隊本部との連絡が
可能なんですが………」
無線機に呼びかけるのをあきらめ,ハンス軍曹が残念そうにぼやく。

要塞の真正面に展開した連邦軍第3艦隊の艦列に向かって,左翼に展開していた
ミルバ艦隊の一翼を担っていた第2宙雷艇隊は守備艦隊の出撃に先立つこと既に
3回,連邦艦隊に対して突撃し,ミサイル雷撃を試みていた。
直衛のMS部隊に阻まれたため当初の予定以下の戦果しか挙げられず,また突撃
響導艇である「ティーゲル」以下の僚艇「ツォーベル」「イルティス」も失われ,
さらにミサイルを使い果たしてしまったたJ級突撃艇「ゲパルト」はコロニーの
残骸に潜み,戦況の行方を見守っていた。補給に帰りたくとも,母港である第6
ゲートとの連絡は途絶したままであったのだ。彼らはまだ知る由も無かったが,
既に第6ゲートは連邦軍の対要塞兵器により消滅していたのである。

「推進剤の残量計算が出来ました。もっとも,再度の突撃は不可能ですけどね。
最悪の場合でも4日かければ,”ピルツ”か”月”までは移動できます。」
外部タンクの残り具合を調べていた機関担当のミルズ曹長が戻ってきて報告する。
(*ピルツ:Pilz,ドイツ語のキノコの意,説明は不要ですよね)

「そこまで,空気が持つと良いがね。」
エルフェルト・エッセン軍医少佐が辛辣な意見を述べる。
当然ながらエッセン少佐は,本来はこの「ゲパルト」艇の乗員では無い。
要塞周辺に浮遊している有人観測ステーションに於いて,急病人が発生したため
往診し,要塞への帰路をこの艇に便乗したところを戦闘に巻き込まれたのである。

本来,J級突撃艇は最低限2人で操縦することが可能であるとされていた。
しかし戦場で酷使され,充分な補給を受けずに使い続け,前線での応急的な改修
が行われた結果,定員を大きく上回る4人の乗員が乗り込んでいた。
(客として乗っているエッセン少佐を含めれば,5人である。)
これは,艇の性能が向上したわけではもちろん無い。
本来の性能を維持するためには余分な2人の乗員が必要となっていたのである。
もっとも,長距離連絡艇としても使用可能なキャビンがあったため(本艇の航続
能力は”月=L5間”を渡洋可能であった)容積的には乗組員にさほどの窮屈を
感じさせない程度の広さを持っていた。

もっとも,この不意の客人を乗組員達は歓迎していた。
戦闘に際して,「有能な医師が近くに居る。」というのはすこぶる結構な事なの
である。(さらに「美人の看護婦」がいれば,なお結構である。by赤い狐)

「発光信号が上がりました。中将閣下直命で『各自脱出せよ』です!!」
双眼鏡片手に戦況を観測していた主操縦士ウィスマン准尉が叫ぶ。
そして,さらに呟く。
「何だ?アレは………?」

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「ね。今日はクリスマス・イブかしら?」
カレンダーがまた動いたみたい「ご名答。赤い狐が始まった最初の場面がここだったのだ。」
「J級突撃艇って,外部燃料タンクが”ダンゴ3兄弟”しているミサイル艇よね?」
「そう,本当は,Mサイ級より小さい駆逐艦のような艦を予定していたんだけど,
そういう設定は見つからなくって,水雷艇(宙雷艇)という事で使わせて貰った
のさ。」
「また,キャラが増えてるわね。一挙に5人も………」
「まぁ,重要なのはエッセン少佐なんだけどね。他はついでに出てきただけで。」
「医者が重要キャラと言うからには,誰か死ぬはずのキャラを……!?」
「『赤い狐』シリーズのIF戦記編はここから始まるのさ。」


赤い狐(J級突撃艇奮戦記)第2話投稿日 : 99年5月31日

「こちら『黒騎士』だ!『クナーベ』『リーゼ』『メッサー』生き残っている者は応答しろ!」
シュライヒ大尉は通信機に呼びかけながらも,返答をあまり期待してはいなかった。
戦場に大量撒布された電波妨害粒子の影響もあるが,かなりのエースを自負する自分でさえ
機体にダメージを受けるほどの激戦であったのだ。
配属されたばかりで経験の浅いパイロットが生き残っている可能性は低かった。
「せめて,脱出しててくれよ。緊急脱出訓練だけは5回もやったんだからな。」

要塞正面の『連邦第3艦隊は囮』と判断した司令部は,別方面からの連邦主力艦隊に対処すべく,
ハーバート隊他を後方に待機させていた。確かにそれは,戦術的には誤りでは無かった。
だが,連邦の対要塞兵器の情報を得ておらず,結果的には艦とMSの多くを失ってしまっていた。

「ジジジ………こちら『リーゼ』,大尉殿!!どちらに………すか?」
「ヴェルナー伍長か?よく無事だったな。動くなよ!すぐ行く!!」
シュライヒ大尉は部下を捜索するために,残弾・推進剤の残り少ない『黒騎士』を機動させた。
「どこだ?」

その時,『各自脱出せよ!!』の発光信号が上がった。
その光に照らしだされて,1機の06Fの姿が浮かび上がる。
「馬鹿もの!!そんな目立つところに!!」
シュライヒ大尉の罵声がヴェルナー伍長に聞こえたかどうかは極めて怪しい。しかし,彼にも
どうしようも無かったはずである。彼の機は既に空間機動能力を喪失しており,電力供給すらも
不安定となり,メインモニターもブラックアウト寸前の状態であったのだ。

ヴェルナー伍長は教練通りに機体からの脱出を試みた。だが,主動力が低下してハッチが開かない。
他の電源を全部遮断し,ハッチ駆動のみに動力をまわす。しかし,動いたのはわずか数センチ。
部隊随一の巨体ではくぐり抜けられそうもない。自慢の怪力を発揮しようと,手動で駆動を試みる。
さらに数センチ動く。しかし,被弾の衝撃でフレームが歪んだのか,途中から微動だにしない。
「こういう時は?」
火薬カートリッジ式でハッチを吹き飛ばす機能があったのをようやく思い出す。
「こればかりは訓練でいじらせては貰ってないからなぁ。」
苦笑しながら,プラカバーを叩き割り,真っ赤なスイッチを押す。大きな衝撃があり,扉が開いた。
その瞬間,連邦軍MSのビーム砲の閃光が背後から06Fを貫いた。

「ヴェルナー!!」
06Fが被弾した時,『黒騎士』の06R−1Aはかなりの近距離にあった。
飛散した部品の一部が右肩のシールドに当たり,跳ね返る。それは,06Fの右腕であった。
「お前の仇は,これで討たせて貰おう。」
バズーカを捨て,その右腕からMMP−78を引き剥がして,装備する。

連邦軍はその空域で,さらにMS3機,戦闘ポッド2機を失うことになる。
………………………………………………………………………………………………………………………
「シュライヒ大尉が出てくるのは良いんだけど,エッセン少佐達は一体どうなったのよ?」
「いや,知ったキャラが出てきた方が読者にも分かり易いかな?と思ってね。エッセン少佐の事
を忘れてる訳じゃないよ。」
「うーむ,逆に混乱させてるような気がするわ。」
「(実はそれが狙いなんだが)この戦い以降,シュライヒ大尉が『死神』と呼ばれるようになるんだ。」


赤い狐(J級突撃艇奮戦記)第3話投稿日 : 99年6月6日

さて,『ゲパルト』の船内では
「ウィスマン!戦闘中だぞ。不明瞭な報告は止めろ。」
バッケ大尉がそう叱りながら,操縦士から双眼鏡をもぎ取り,自分ものぞき込む。
「確かに,化け物みたいだな。しかも,敵艦のビームを弾き返している。」

「艇長,何なのでしょうか?あの『ハンプティ・ダンプティ』は?」
「儂も知らん。多分,味方の新兵器なんだろうが,凄いな。」
「あ,また1隻巡洋艦を沈めた。あんなのが量産されたら,俺達は失業だな。」
「誰が乗ってるんだ?機体の性能も凄そうだが,パイロットも相当の腕じゃないかな?」
等と皆が観戦している中で
「チャンスです。今の内に無事なデポ(物資集積所)を探して,補給しましょう。」
ハンス軍曹が建設的な意見を出す。

「そうだな,現状では脱出も出来ん。弾薬はともかく,推進剤が無いと,戦線の突破も不可能だ。」
「敵との交戦が薄かった宙域となると,第8ステーションか?あそこは,ほぼ手つかずのはずだ。」
「よし,周囲の状況に注意しつつ移動。対空監視怠るな。少佐もお願いします。」
「了解した,バッケ大尉。」

そして,たどり着いた第8ステーションには1機のMSの影が………
艦内に一瞬緊張がはしる。しかし,それは,
「味方のZKです,06R1−Aですね。黒のパーソナルカラーということは?」

「こちら,ハーバート隊第13独立中隊『黒騎士』である。貴艦は?」
「ミルバ艦隊第2宙雷艇隊所属『ゲパルト』である。」

バッケ大尉とシュライヒ大尉が今後の行動を相談しているうちに,補給は続く。
黒騎士隊は,この第8ステーションを常用しており,脚部用推進剤タンクまで準備してあった。
ミルズ曹長とハンス軍曹はZKの補給を手伝い,被弾箇所の応急修理をこなしている。
本来の復座の定員ではこうはいかなかったはずである。

「補給作業完了しました。」
「うむ,ではここにはトラップを仕掛けて脱出する。」
「シュライヒ大尉,準備は宜しいですか?」
「OKだ。しかし,あの新型MAが大暴れしている脇をすり抜けるとは,よくも考えついたものだ。」
「連邦軍は要塞に取り付いているから包囲網は比較的薄くなっているし,あの新型MAが攪乱して
くれたおかげで,穴だらけだ。それに脱出を援護する為に相当強力な部隊が動いているみたいだ。」
「通信傍受で確認できただけでも,302中隊と,343中隊が出ています。」
「だが,あまり,まごまごしていると,彼らも脱出してしまうぞ,急ごう。」
「よし,敵第2連合艦隊の中央部へ,突撃!!」
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「302中隊は,例の巨大なビームライフルを使っていた試作型14Hが隊長の部隊の事でしょ?
で343中隊ってのは何なの?」
「実はヒュウガ大尉率いる『白虎隊』の事だったりする。」
「あれって,相当強力な部隊だったんだ。」
「09Rは,一定練度以上のパイロットが乗れば,連邦の量産機とは互角以上に戦える性能を持って
いたはずだよ。エースパイロットが乗っていれば連邦軍のGMごときにはやられるわけが無い。
実際TVでだって,第13独立艦隊以外の部隊にやられた09Rって,そんなに映って無かったはず
だよ。あの化け物部隊は例外として,他のMS部隊には負けちゃいないんだ。」
後退命令に従い要塞に戻ろうとしたところを背面から撃たれた1機を除き,ソロモン戦(TV版)で
撃墜された総ての09RはWB隊にやられたものでした。ホントですってば。


赤い狐(J級突撃艇奮戦記)第4話 投稿日 : 99年6月11日

「あ!あの『ハンプティ・ダンプティ』がやられた。」
「チャンスは今しかない。突撃だ!」

突撃艇『ゲパルト』と『黒騎士』06R1−Aは,連邦軍第2連合艦隊中央の「穴」へと突撃した。
加速には定評のある艇・MSである。目敏く妨害しようとした敵MSを一蹴して,包囲網を突破する。

「艇長,『黒騎士』が遅れています!!」
「何,ぼやぼやしている暇は無い筈なんだが?」

シュライヒ大尉は進路上で,自軍の巨大MAが爆発飛散するのを確認して,僅かに進路を変えた。
そして,その進路には………

「ヴェルナー!?」

『リーゼ』という機体コードを貰っただけの事はあり,ヴェルナー伍長は新入りの中ではもちろん,
部隊内でも一番の巨漢であった。だが,彼の目に留まった漂流中のパイロットが,ヴェルナーである
可能性は低いようにも思えたし,生きている可能性も低いと思われた。しかし,彼にはこれを無視
する事は出来なかった。急遽,制動を掛けて,そのパイロットを拾い上げる。
最初に見て感じた通りの大男である。機体の爆発に巻き込まれたのであろうか?
ノーマルスーツの背中は焼けただれており,ヘルメットのバイザーも煤けて顔が確認出来ない。

巡洋艦の機関砲弾が至近距離に炸裂した。かわすために『黒騎士』が機動する。
その時,シュライヒ大尉は,腕の中のパイロットの体が,わずかに動いた気がした。

「スーツの気密も確保されている。」
なぜか,そう確信した彼は『ゲパルト』に軍医が乗船していた事を思い出した。
「エッセン少佐に伝えてくれ。負傷パイロットを救助!大至急,救急救命処置の準備を!」

連絡を受けた『ゲパルト』は,連邦軍包囲網を突破したことを確認して『黒騎士』の到着を待つ。
もちろん,船内ではエッセン少佐以下が患者到着前に出来る限りの準備を始めていた。
「背中の広範囲が2度〜3度の重傷熱傷の可能性があるんだな!?それはかなりヤバい状況だな。
体表面の15%以上の広範囲に及ぶと,この艇の設備程度じゃどうしようもない。しかし,爆風の
影響は無さそうなんだな。そいつはひと安心だ。変に頭とか脊椎とかにダメージがあっても,ここ
じゃ,手も足も出せんからな。」
「少佐殿,リンゲル液はこれだけしか有りませんが?」
「それはそこに置いといてくれ!私の鞄に皮膚欠損用緊急被覆材が入ってるはずだ。それも持って
きてくれ!それから,寝台代わりに使う,誰か耐圧シュラフを!」
「ミルズ,機関部から”純酸素”をボンベに汲んで来るんだ!」
「了解,おいハンス,手伝え!」

そうこうしている内に,『黒騎士』が到着し,患者が運び込まれる。
「皮膚と癒着しているノーマルスーツを剥がす,キャビンを与圧するんだ。そうだ,気道の確保を…」
そして,ヘルメットが外された。…………………………………………………………………………………………………………………………

「良かったわね,ヴェルナー伍長は助かりそうで。」
「まだ,助かったという訳では無いぞ。医療ドラマなんかで,医者が患者の家族に『まだまだ,予断
を許さない状況です。』とか深刻ぶったセリフを言って,家族も『どうか,よろしくお願いします。』
とか言っている状況だからね。」
「これで患者が助からなかったら,何のためにエッセン少佐が登場したのか判らないじゃないの?」
「あ!ヴェルナーが助かったら,「出撃僚機が未帰還」という『黒騎士』のジンクスが出来ないな。」
「じゃぁ,せっかく拾い上げたのに,見殺しにしちゃうの?」


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