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赤い狐(策動編)第1話 投稿日 : 99年9月2日

それは,アフリカを脱出した公国軍残党の乗るシャトルが地球を離脱,連邦軍の追撃を受けながらも,
L4点のとあるコロニーに逃げ込んだ事が発端であった。

「なんだか,様子が変じゃありませんか?」
シャトルを操縦していたジャバラ大尉が,宇宙港を見渡して言う。
「確かにそうだな。最悪,我々を逮捕するための部隊が配置されている事も考えてはいたんだが,
それにしても………?」
シャトル脱出部隊総勢40名のリーダーであるブラックバーン中佐も辺りの異常さに気づく。
コロニー『ノバ・ソリマ』の第一宇宙港には,数千人を越える民衆が待ち受けていた。
報道関係者と思しき,カメラを抱えた集団もちらほら見受けられる。
「著名なタレントが,このコロニーを来訪する予定にでもなっているのだろうか?」
ブラックバーン中佐はそう考えながら,何か懐かしいものを感じていた。確か昔にもこんな事があった
ような気がする。
「どうします?中佐」
ジャバラ大尉に尋ねられ,既視観から中佐は呼び戻された。
「どうするって,燃料も無いんだ。シャトルに立てこもっていても仕方があるまい。」
「そうですね。このコロニーに辿り着けたのでさえ運がいいんでしょうね。アフリカで殺されるのを
免れたと考えれば………」

シャトルのハッチを開き,公国軍人達は宇宙港に降り立った。
市民の間からわぁーっと歓声があがった。カメラのフラッシュが煌く。
戦い疲れていた戦士達は,何事が起こったのだろうかと狼狽する。
ブラックバーン中佐とジャバラ大尉の前に一人の紳士が現れた。中佐はその人物の顔を覚えていた。
「あなたは,ハミルカルさん。」
紳士も中佐の事を忘れてはいなかった。
「覚えておいていただいて光栄です。ブラックバーン中尉殿。」
そのハミルカル氏は中佐を3年前の階級で呼んだ。

「中佐,こちらの方とお知り合いですか?」
肩を抱き合って,再会を喜ぶ二人を見比べながらジャバラ大尉が尋ねる。
「あぁ,この御仁は77年7月の革命の時に,連邦軍の装甲車の上に登って,自由リーア州の三色旗を
振るったというツワモノだよ。」
「そして中尉,失礼,今は中佐殿のようだ。彼の指揮するZK部隊の支援が無ければ,私達の活動は
連邦の鎮圧部隊に制圧されて,頓挫していただろう。君はこの『ノバ・ソリマ』コロニーにとっては,
英雄で,私個人にとっても戦友だよ。」

「なるほど,これほどの歓待を受ける理由が判りましたよ。」
ようやく事態を納得したジャバラ大尉を押しのけて,報道記者やカメラマンが近づいてくる。
「ハミルカル市長!ブラックバーン中佐と肩を組んでいただけますか?」
「市長,かつての戦友とも言うべき中佐との再会について,一言!」

「市長?君がか?」
「そうだ,市民を代表して歓迎しよう。『ノバ・ソリマ』にようこそ。」
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「サブタイトルからして,怪しげだけど,謀略編とはどう違うの?」
「謀略編はあくまで,水面下で動いていたけど,今度は少しは表に見える活動がメインなんだよ。」
「ところで,サイド6の革命って,本当にこんなだったの?」
「そんな資料は残っていないよ。というか持っていないだけかも?一応ZK(05)が革命支援に参加
したことはセンチュリーに出てるんだけど,77年7月はセンチュリー暦だから違うかも?」
「ちなみに,今回の登場人物は全てオリジナルだそうでーす。」


赤い狐(策動編)第2話 投稿日 : 99年9月6日

サイド6の秘密工場(大戦中は連邦GM用の部品=無重力下でしか精製不可能なほとんどのパーツ類を
製造していた場所でもある)の最終工作ラインで,男は組み上がった14JGの勇姿を見上げていた。

「どうですか,大尉。月の裏側で仕上げた本物と互角,いいや,連邦の技術が入っているだけ,ウチの
製品の方が出来映えが良いと思いませんか?」
工場長は,男に向かって自社で製造した機体の優秀さをしきりに訴えている。
しかし,男はその話には聞く耳もたないといった風情で,宙を飛んでコクピットに乗り込み,操縦装置
を動かす。もちろん,ジェネレーターは起動していないので動くはずも無い。
「大尉,その機体は,まだ動きませんよ!!」
工場長が,言わずもがなの注意をする。
「判っている。操縦機器の操作感覚をチェックしただけだ。問題は無いみたいだな。」
降りて来ながら,男は答える。なにしろ,これに乗るかもしれないパイロットは,シミュレーション機
から,いきなり実戦でこの機体に乗るかもしれないのだ。人間の都合が合わないのなら,せめて,機械
の方で万全を期しておく必要があるのだ。

工場長の話す,今後の生産計画を聞いていた男の元に急報が届いた。
「大尉殿,画商の富士山さんとおっしゃる方から電話が届いてますが………」
工場長秘書が届けた受話器を手に取ると,相手は音声変換しているものの,案の定フェードラー大尉で
あった。
「おや,富士山さん,お久しぶりですな。急用のようですね,こうして私を探りあてたとなると。」
「そうですよ,先般お話していた『ブラックバーンの絵』が見つかったんですよ。しかも意外な場所で,
ところで,そちらは,宜しいんでしょうか?お仕事中のようでしたら,後程にもお伺いしますが?」
「そうですね。では1時間後にこちらから,画廊の方,で宜しいですね,連絡しましょう。ところで,
画題は何という作品ですか?」
「それが,『七月蜂起』なのですよ。エルミタージュ美術館から公国軍によって持ち出されて以来,行
方がわからなくなっていたのが発見されたのですよ。これは凄いことですよ。」
「なるほど,元の持ち主が,何か言い出す前に手に入れねばなりませんな。では,これ以上の話は後で。
くれぐれも他所には,内密にお願いしますよ。」

「工場長,どうも済みません。私用で電話をお借りしてしまって。」
「いえ,かまいませんとも。私には判りませんが,連邦をギャフンと言わせる企みなら,私も一口乗せ
てもらいたいくらいですよ。」
「そういう話は,この格好をしていない時に,口にして下さいよ。」
男は,そう言って自分の軍服を指し示して笑った。

それから,1時間後。男はフェードラー大尉の経営する画廊と連絡をとっていた。
「『ブラックバーン』の方はすぐにピンと来たんだが,『七月蜂起』ってのは,何なんだい?」
「『ノバ・ソリマ』ですよ。3年前に我が軍が革命を支援して,ZK部隊を派遣したコロニーです。」
「なるほど,さぞかし歓迎を受けてるんだろうな。」
「それはもう,バッチリです。ですが,連邦軍も黙ってはいないでしょう。」
「そうだな,ブラックバーン中佐が地球を脱出した時の,手助けの度がちょっと過ぎたしなぁ。」
「イヌマ中尉率いる,新生『白虎隊』が支援しましたからね。血気盛んな初陣パイロットを押さえきれ
なかったのが原因ですね。」
「だが,アレが我々の戦果だとは,連邦も気づいてはおらんのだろう?」
「そうです。だから連邦軍も遮二無に,中佐らを追いかけてるんです。多分,追撃の艦隊の規模は相当
なものになってるはずです。」
「連邦軍が戦力を分散してくれるのは助かるよ。『グロース・シルム』計画のためにもね。」
「それは同感です。」
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「また,新しい企みをしてるみたいね。」
「まぁ,当然といえば当然なんだけどね。謀略編のネタだけじゃさすがに,連邦相手は苦しいから。」
「14JGなんて機体を新米パイロットが,いきなり使いこなせるのかしら?」
「だから,ずっとシミュレーションで14を使ってれば,良いんだよ。現にF2に乗っていて,実戦で
初めてGP−01に乗り戦ったパイロットの例もあるし。」
「ところで,グロース・シルムって何?」
「例によって,ドイツ語でグロースは『大きい』,シルムは『傘』だよ。」
「え?アレは『ピルツ』じゃなかったの?」


赤い狐(策動編)第3話 投稿日 :09月14日

赤い狐(策動編)第3話地球連邦軍は正式な外交ルートを通して,『ノバ・ソリマ』コロニーに逃げ込んだ公国軍残党の引渡し
を要求した。ランク政権はこれを受諾せざるを得ず,コロニーにその旨を命令した。しかし,『ノバ・ソリマ』からの返答はこれを拒絶するというものであった。
それどころか『前大戦末期からの連邦よりの施策を,恩義ある公国に対する裏切り行為である』として糾弾する内容の回答すら送ってよこした。
リーア州の内国安全保障局と『ノバ・ソリマ』市との間で,実りの無い交渉が1週間続いた。
その間,ブラックバーン中佐達は革命3周年記念式典あるいは彼ら自身の歓迎式典等に主賓として招か
れていたりして,忙しい毎日を送っていた。もちろん,水面下では彼らを月,本国もしくは残党が終結しつつあるL1ポイントへ脱出させるための船の用意も進められていた。
ランク政権を仲介しての交渉に進展が無いことに業を煮やした連邦軍は,直接『ノバ・ソリマ』市との
交渉を試みた。しかし,ハミルカル市長は引き渡し要求をにべも無く断った。
「よいですか,市長。彼らは地球を脱出する際,連邦軍の財産であるシャトルを略取し,さらに軌道上
をパトロール中の巡洋艦2隻を大破し,MS14機を破壊しておるのです。これらはいずれも停戦協定発効後の事であり,連邦宇宙法に則って裁かれるべき犯罪行為ですぞ!!」
「停戦協定と言われるが,彼らには正式に戦闘中止命令は届いておりません。何しろ,ここに辿り着く
まで,本国に共和国が成立したことすら知らなかったそうですからね。それにしても,シャトル1機に
巡洋艦2隻とMS14機ですか?連邦軍はもっと優秀だと思っていましたよ。」「くっ,市長。我々をあまりなめない事だな!!」
捨て台詞を残して,追撃艦隊の司令官は通信を絶った。「市長,よろしいのですか?連邦軍を挑発などして。」
「私は公国の示した友誼を忘れてはいない。3年前に共に戦ってくれた恩義もだ。ブラックバーン中佐
は私を頼ってくれたのだ。この信頼に答えることが私の義務であり,市民の願いでもあるのだ。」
(実は,中佐がこの『ノバ・ソリマ』に逃げ込んだのは偶然であった。いや,推進剤残量と追跡隊との
距離といった物理的な要因から生じた必然でしかなかったのだ。しかし,市長の誤解は今となっては,もはや大した問題では無かった。)
「判りました。警察部隊を動員して中佐らの保護にあたらせます。ドラケン部隊の出動も………」
「かまわん,許可する。だが,連邦軍がMSを出してくるようなら無茶はさせるなよ。」
「まさか,そんな馬鹿な事をして,スペースノイドの信用を失うような事はしないと思いますが?」
「もし,その事態が生じたら全情報を報道に開放しろ。武力に対抗できるのは,世論だけだからな!」「はい,彼らのこれ以上の恥の上塗りにならないように祈りましょう。」
だが,連邦軍の司令官はもっと短慮であった。いつのまにか戦艦2隻,巡洋艦5隻にまで増えていた追撃艦隊は,コロニーの港を封鎖,制圧した。
GMに護衛された治安部隊が上陸し,装甲車を連ねてブラックバーン中佐達が滞在中のホテルを目指す。
これらの行動は,全てマスコミにリークされ,リーア全土,いや月面都市や他のコロニーにまでも報道されて,かなりの視聴率を稼ぎだした。
ホテルを守るために配備されていた警察部隊のミジェットMSは連邦軍の装甲車相手には善戦した。
しかし,所詮はGMの敵では無かった。20機以上のドラケンがあっという間に破壊され,警察部隊の組織的な反撃は止んだ。
しかし,連邦軍治安部隊がホテルに踏み込んだとき,中佐達はそこには居なかった。中佐達を歓迎する
式典が市民ホールで開かれており,それに出席していたのだ。その事を知り,移動しようとする連邦軍は,ニュースを見て駆けつけた数千人の市民に囲まれていた。
部隊の指揮官にも理性は残っていた。MSの火器や機関銃で薙ぎ払うわけにもいかない。「ガスを使う。各員マスク着用!!」
暴徒鎮圧用ガスが使用された。興奮状態を鎮静化し,身体機能を一時的に低下させる効果を持ったガス
である。集まった数千人の市民に対し使用されたガスは,期待どおりの効果をあげた。
興奮状態で兵士達を罵っていた民衆は静かになり,足の筋力が低下し,立っていることが出来なくなりしゃがみ込んだり,倒れこんだりした者もいた。
この様子を報道したマスコミの中で,事実誤認の挙句『毒ガス攻撃!』と報道したメディアがあった。
そして,この誤報が流れた瞬間,『ノバ・ソリマ』から外部への一切の通信・連絡が途絶えた。……………………………………………………………………………………………………………………………
「通信を途絶させたのは,やっぱり,赤い狐の仕業ね。」
「うん,否定はしないでおこう。直接動いた部隊は別だけどね。」
「それで,誤報を流したのも,赤い狐の手配したマスコミなのかしら?」
「そこまでは,悪辣なことはしてないと思うがなぁ,まあ状況は,最大限利用はするけどね。」
「ところで,ブラックバーン中佐達はどうなったのよ?」
「連邦艦隊とMS部隊がコロニー内へ突入した頃合を見計らって,脱出。外で待機していた船で脱出。
もう,どこかに逃げてるはずだね。」


赤い狐(策動編)第4話  投稿日 : 99年9月19日

月の裏側,グラナダ市議会議事堂は異常な熱気に包まれていた。
戦争終結以来,連邦軍は旧公国軍の捕虜に対する軍事裁判を極秘裏に処理していたが,この度捕らえら
れた突撃機動軍の残党に対するそれは,公開で行われる事となり,その場所としてこの議事堂が選ばれ
たからである。

これは,異例の事態といえた。
しかし,地球攻撃軍に参加して地上で捕虜となった者を別として,宇宙で捕らわれた捕虜の中で佐官級
以上の者は少なく,しかも「公女殿下の懐刀」として暗躍していたとの噂も高い海兵隊の指揮官である
事がいつの間にかマスコミに漏れ,グラナダ市はもとより宇宙市民の関心の的となっており,連邦軍も
これを無視し得ない状況となっていた。
それに,彼女(件の海兵隊指揮官は女性であった)の口から,公王家の戦争責任(戦争犯罪に関する
命令等)に関する供述が得られれば,連邦軍の正義を主張する好機であると考えられたのである。
多数の傍聴人とマスコミ関係者の見守る中,彼女に対する審問が始まった。

「………,貴官はサイド2第17バンチ,第22バンチ及び24バンチコロニーの攻略作戦において,
GG(ダブルジー)ガスを使用して市民を殲滅するよう部下に命令を下していますね。この件について
相違ありませんか?」

彼女はその質問に慎重に答えた。
「確かに,使わせたよ。なにせ攻略対象のコロニーの数は多すぎたからね。いちいち制圧戦をやってる
暇は無かったんだよ。けどね,これだけは言っとくよ。手下達には何の責任も無いってね。やつらにゃ
治安維持用の無力化ガスだって教えといたんだからさ。部下達には寛大な扱いをしてやってくれ。」

会場にざわめきが起きた。少なくとも,公式な場で公国軍の将兵がBC兵器の使用を認めたのは初めて
であったからだ。それに『一般の兵士がその事実を知らされずに作戦に参加させられていた。』という
情報も初耳であった。ならば,公国軍の残党兵士に対するスペースノイドの市民感情も少しは穏やかな
ものとなる可能性があった。

「では,コロニーに対するGGガスの使用を命じたのは誰ですか?」
検察官はこの裁判での最も重要な質問を口にした。予備審問(リハーサル)では,ここで公王家長女の
名前が挙がることになっていた。会場が彼女の次の回答に注目する。

「このあたしが,自分で考えたのさ!」

この回答に議事堂は騒然となった。予定外の発言である。彼女の弁護士すら状況に対応しきれずに狼狽
している。

「静粛に!」
裁判官が木槌を叩く。

しかし激昂した検察官はそれを無視して叫んだ。
「何を寝ぼけたことを言っている。じゃあ,ガスをどこで調達したか!答えられるものなら言ってみろ!」

「良いのかい?そんなこと言っちゃって。」
この微妙な問いかけを検察官は自分の発言に対するものと勘違いした。
「あぁ,何度でも言ってやる。ガスはどこで手に入れた?」

「連邦軍さ。旧世紀の遺物の毒ガスが中央アジアにはたっぷりと残ってたのさ。これを使って,宇宙の
人口を減らす。しかも,その罪を公国軍になすりつける。良いアイディアだろう?」

会場に彼女の高笑いが響く。そして,関係者は気づいた。これが全世界に生中継されている事に。
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「なんだか,全然裁判の風景に見えないんだけど?」
「そうなんだ。軍事裁判って,よくわからなくてね。適当に作ってしまった。しかも,彼女が神妙に
している様子ってのが,全然想像がつかないから,高飛車なままの描写でいきました。」
「確かに,神妙にしてたら,誰が誰だかわかんないわよね。ちょっと待って,この女の人って,実は
替え玉の俳優じゃなかったかしら?」
「さあ,どうだろうね?意外と自分でやってたりして。」


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