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赤い狐(謀略編)第9夜 投稿日:08月09日

ビーム砲の閃光が煌めき,ミサイルの爆発が巨大な火球を作る。危険報知の警報音が鳴り始め,爆
発音とともに,非常ブザーが響く。電子音声が重大な機体損傷を告げるが,パイロットは構わず,
次の獲物を探し機動を再開した。

ここは,リーア州『フランチェスカ』。観光で知られるコロニーの繁華街にあるゲーム店である。
このゲームセンターで,最も人気のあるゲーム,その名も『MS・ウォーズ』。プレイヤーは連邦
軍のMSパイロットとなり,敵MSと戦うというゲームである。主人公機は連邦製MS(いわゆる
G兵器)であったが,対戦プレイでは公国軍のMSに搭乗する事も可能で,ZKは人気があった。

リーア州を代表する企業ソーカル・グループの会長,グルベンキアン卿はそのゲーム機の筐体の中
に居た。表向きは,自社製品であるこのゲーム機を視察するという建前であったが,本当は自分も
遊んでみたくなったのだ,という裏話を側近たちは聞かされていた。だが,真実は……

グルベンキアン会長は筐体の中で,メインモニターを見つめていた。画面に映し出されているのは
戦場では無く,対戦相手の姿である。そう,モニターの中にいたのは,公国復興のために画策する
例の男であった。店内の別の筐体の中にいる人物との秘密会談の,これは秘かな舞台であった。

「秘密を守るには好都合なんじゃろうが,なんともここは,騒々しくていかんなぁ,大佐。」
「何をいわれます,グルベンキアン卿。このゲーム機の販売で大儲けをされているのでは?」
「それについては感謝しておるよ。君に貴重な戦闘データを貸して貰ったおかげで,非常にリアル
なシミュレーション機となっておる。つい先日にも,連邦軍が初等訓練用に使いたい等と照会して
来たよ。もちろん,平和を愛する我が社としては,軍との取引は丁重に断ったがね。」
「感謝を頂く謂われはありませんね。それよりも,私の方が礼を言いたいくらいです。パイロット
特性のある若者の発掘は,我々の急務です。残された時間は僅かしかありません。少しでも,MS
乗りとして使える人材を集めなければ,連邦軍に勝利する事は不可能です。」
「まさか,このゲームで遊んでいる青年達も,公国軍で最良のMSシミュレーターで訓練されてる
とは夢にも思っとらんだろうな。」
「既に,リーア州全土で,2万人の適格者を発見しました。現在は思想調査中ですが,半分の者に
は協力を願えるでしょう。現段階で300人と接触,実戦教育を授けている最中です。また,同様
に月でも計画が進行中です。」
「しかしな,大佐。次の戦いで『連邦が,我がリーア州を攻撃する。』という話は,どうにも信用
出来ないと,いや,これは社内の反対意見なのだがな。」
「次も日和見で儲けてやろうと,考える連中ですね。座席の下の資料に目を通して下さい。これは
『超極秘資料』です。御覧になられたら,持ち出さず,座席の下に戻して下さい。」
「おお,これかな?………なっ,なにっ!?」
そして,その書類を読んだグルベンキアン会長は,その内容に戦慄した。

「大佐,了解したよ。こんな事が許される筈は無い。我々は州を挙げて君達の…いや,これはもう
我々の戦いだな。支援を約束しよう。」
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「また,誰か騙したみたいね。それにしても,グルベンキアンって誰?ソーカルって何?」
「それは,オリジナルなので,回答のしようがないよ。つまり,戦争で大儲けした会社とその会長
だと思って貰えば良いよ。赤い狐は秘かに情報を漏らして,それを手助けしていた訳だ。」
「つまり,同じ穴のムジナって事ね。」


赤い狐(謀略編)第10夜  投稿日08月11日

「なるほど,なかなかやるじゃないか?これで,初陣というのは出来過ぎだな。」
輸送艦隊を撃滅した部隊を率いていた『黒騎士』シュライヒ大尉は呟いた。
「確かに,実戦は初めてですが,シミュレーションは300時間以上を経験しています。しかも,
訓練相手は我が軍のエースパイロットの戦闘データを編集したプログラムです。リーア州の義勇兵
といっても,大戦末期に動員され,ろくに訓練も受けずに実戦に出たパイロット達よりも,はるか
に技量は上ですよ,大尉殿。」
06R−1Aのコクピットの一角を占領している,人工知能プログラム”クラウス”が答える。

「それに,あの新兵器『ビームバズーカ』とかの威力も凄いじゃないか。」
シュライヒ大尉はクラウスには答えず,部下の09RII編隊の動きを眺めている。
「うん,良い動きだ。だが,あの機体機動の癖は………そうか!『白狼』の動きだな。上手く真似
したもんだ,っと,危ねぇ!!」
接近してきた,連邦GM機の攻撃をかわし,バズーカ砲弾を撃ち込む。自機のみが,従来装備なの
は,新兵器の信頼性を彼が評価していなかったためであったが,部下達は発射回数に制限がある,
そのビームバズーカをうまく使いこなしていた。
「ひょっとして,あの武器もゲームの設定に取り込んであったのかな?」

「はい,大尉殿,ビームバズーカは『威力は強力だが1回の出撃中に3発しか発射できない』と,
いう武器として『MS・ウォーズ』に登場します。もちろん,ジェネレーターの件などは秘匿され
ています。」
クラウスが嬉しそうに説明する。

「しかし,このアイディアは地球に侵攻しなければ,我々は思いつきもしなかったろうな。」
「はい,大尉殿。開発の盲点でした。」
「そろそろ,皆の燃料が切れるな。工作員の潜入の準備も出来たようだし,潮時か!
よし,『全機へ,各個に離脱!ヤルパとエスパーダは私と共にしんがりを守る。ビームバズーカの
燃料が残っている者は二人と武器を交換しろ!!連邦の追撃が来るぞ。撤収,急げ!!』」

「ウラッコ機,ハラマ機,イスレロ機のビームバズーカに2射分の燃料が残っています。追撃中の
GMは14機。これらは,掃海作業監督任務中のものであり,武装は軽微。」

クラウスは,各機とのデータリンクを利用し,的確な情報を入手。これをシュライヒ大尉に伝えて
いたが,大尉の方はこれをほとんど無視していた。しかし,指揮ぶりに誤りは無く,どうやら,
『死神』の汚名も完全に返上出来そうであった。

襲撃機を追撃していったGMに取り残された形になった,掃海作業中のZKは最初は悩んだ。
この機会に脱走すべきではないか?と。しかし,襲って来た部隊の詳細が不明であり,集団脱走が
かえって迷惑になる事を危惧した彼らはそこに残った。
そして,撃沈された輸送艦の乗組員の物とおぼしき信号をキャッチし,これの救助活動を始めた。

合計9隻の船舶が沈められ,回収されたのはたったの4人である。しかし,事実は異なる。生存者
は一人もいなかったのだ。
……………………………………………………………………………………………………………………………
「ねぇ,新兵器の『ビームバズーカ』って,何なの?燃料が要るビーム砲って変じゃない?」
「09Rには,どうしてもビームバズーカを装備させたかったので,無理矢理設定を作ったんだ。
小説版にも出てたしね。燃料うんぬんは,また後で解説するよ。」
「ところで,リーア州の義勇兵の名前,どこかで聴いたような?」
「きっと他にも,イオタとかシルエットとかミウラとか居るんだよ。」


赤い狐(謀略編)第11夜 投稿日 : 99年8月16日

デトローフ大尉の拳銃が火を噴き,男の胸を貫く。派手な血しぶきが飛び散り,男はその場に崩れ
落ちて倒れた。しかし………

「やれやれ,気の早い副官殿だ。」
男は,何事も無かったかのように立ち上がり,胸の血糊を拭う。
強力な抗弾衣を,下に着ていたようである。血が飛び散ったのは特殊効果の小道具らしい。
「つまり,こういう具合に死んだ振りをして欲しいわけだ。もし,芝居をうまくやれる自信が無い
なら,スタントを立てても良い。っていうか,実はベテラン女優に,もう頼んである。」

「ほおぅ,おもしろそうな話じゃないか?で,あたしが死んで,どうなるんだい?」
咄嗟に顔を覆ったため,飛び散った血糊をかぶった扇を眺めて女が問う。
「陛下には,君を厚遇なさるように進言してある。もちろん,我が陣営に加わるならばだが。」
「部下達はどうなる。海兵隊の皆を?」
「うまく運ぶよ。さしずめ『君の弔い合戦』を仕掛けて来て,連邦軍に返り討ちに合うという手順
になっている。その連邦軍というのが実は私の事で,これも偽装工作の内だけどね。」
「つまり,この『サイレン』ごと海兵隊の戦力が『先生』の手の内に入るというわけだね?」

「そんな虫の良い話があるか?我々海兵隊と姐さんの名誉を汚した上に,戦力として吸い上げよう
という話じゃないか!」
デトローフ大尉が激昂して,再び拳銃を向ける。今度はちゃんと眉間に狙いをつけている。
それを無視して,女が尋ねる。
「もし,断ったらどうするね?『先生』」
男は脇に置いて有ったトランクをテーブルに載せて,開いた。中身は金塊である。もし,この会談
が地球上で行われていたなら,男一人の力ではとうてい持ち上がらない量が詰まっていた。
「手付け代わりに持参したものだ。君の意向の如何に関わらず,名前は貸してもらう。その代金の
つもりだと思って貰って良い。ただ,ニュースに死亡記事が載った後は,なるべくおとなしくして
いて欲しい。出来れば,改名して貰いたい,この艦もだ。例えば,『カルメンシータ』とかね。」
「判ったよ。もう,あたしらの名前は『人類の敵』という汚名にまみれてるんだ。この上,裏切者
の不名誉が加わってどうなるってもんじゃないさ。ただね,『カルメンシータ』は頂けないねぇ。
『リリィ』が良いよ。よし,今日からこの艦は『リリィ・マルレーン』だ。いいね。」
思わぬ展開にデトローフ大尉は目を白黒させている。

「了解して貰えて嬉しいよ。今度は内緒で遭おう。」
と言い残して,男は去った。
「どうして,あんな申し出を受けたんです?」
「判らないのかい?あの『先生』は,どうやら公式記録上から,海兵隊を全滅させたいんだよ。!
新しい公国軍への参加を渋るようなら,ホントにこの艦を沈めるつもりなのさ。」
「でも,奴をここで殺してしまえば!!」
「お前さぁ,あいつが本物の『先生』じゃない,とかは疑わなかったのかい?」
「えっ,じゃあ,今のは影武者?」
「そうかも知れないんだよ。なにせ『敵を欺くにはまず味方から』がモットーって先生だからねぇ。」
……………………………………………………………………………………………………………………………
「なるほどね。『サイレン』が名前を代えて『リリィ』になっちゃった訳ね。」
「これは,勝手な俺説だから信用しない事。って断るまでもないよね。」
「そもそも,この『謀略編』で語られてる事に,事実なんて在るのかしら?」
「ひょっとして『赤い狐』が喋ってる話の内容はほとんどが『嘘』かも知れない。」


赤い狐(謀略編)第12夜 投稿日 : 99年8月18日

「君のお父上と,先代の公王陛下の確執というものは,本当は無かったのだよ。国家指導者としての
カリスマを充分に発揮していた初代首相と,財政面・軍事面をサポートしていた先代陛下のお二人は,
互いの協力が無ければ,独立という目標の達成は不可能だという事を理解しあっておられた。お二人
の間で問題となっていたのは,いざ,連邦との対決姿勢を示すときに,月の裏側だけで事を構えるか?
それとも,全てのコロニーが一致団結して戦いを挑むか?その点だけだった。そして,軍事・経済に
精通しておられた先代陛下の方こそが,寡兵を持って戦う事の無謀さを知り尽くしておられ,全ての
コロニー群をまとめ上げるためのカリスマとして,初代首相の存在が如何に大事であるかを熟知して
おられたのだ。」

「ならば,何故?父を殺した!!」
「私が何故,連邦軍にもぐり込んだかを,教えよう。初代首相を暗殺したのが連邦の特務機関の仕業
だという証拠を見つけるためだ。」

「連邦軍が父を!?しかし,ジンバ・ラルは………」
「彼は,連邦に籠絡されて,君たち兄妹を拉致して地球に逃亡した。君が成長して父上の偉業を継ぐ
事を連邦は恐れていたんだ。」
「それで,連邦が父を………,一体何故?」
今まで信じていた事を全て覆され,狼狽した彼は自明の事を尋ねる。
「私が教えるまでも無い事だよ。独立運動を阻止する有効な手段だ。そして,先代の陛下はその死亡
原因を秘匿しなければならなかった。もし,彼が連邦に暗殺されたと公表した場合,世論は暴発して,
過激な対連邦強硬論者が力を得る。結果,何の準備もなく独立戦争を仕掛けなければならない事態が
生じる可能性があったからだ。それで死因は病死と発表するしかなかった。ご無念は察して余りある。」

「だが,跡継ぎを命じられたのに,自ら王位に就いたのは?」
「国をまとめ上げるための,方便に過ぎなかった。長じれば,公王位を君に禅譲するおつもりだった
らしい。しかし,君たちは誘拐同然に連邦に連れ去られた。我が友『Blue Giant』が何故,出世の道を
閉ざされていたのかは理解できるだろう?」

「テロの応酬があった筈だ。」
「あぁ,それも一緒に調べてきた。サスロ殿下襲撃も連邦の仕業だったし,これ以外にもいくつかの
テロを仕掛けている。それぞれ『故首相派』『公王派』の仕業に見せかける情報操作で,対立を煽る
という戦術だよ。古典的な謀略だよね?」
「そんな,馬鹿な!!」
そして,男は最後の駄目押しを口にした。
「君の公国への再入国にも連邦の特務機関が糸を引いていたよ。王家の四男坊と同じクラスになった
のが,偶然の幸運だと信じていたのなら,君も大した坊やだよ。」

「本当なのか?………すまぬ。」
赤い服の大佐は,誰かの名前を呟き,謝罪の言葉を口にしたように聞こえた。しかし,その名を呼ぶ
声は小さく,男にも聞き分けられなかった。

赤い狐(謀略編)〜〜〜Ende〜〜〜〜
……………………………………………………………………………………………………………………………
「やぁ,どうにかこうにか,陰謀の種は撒き終わったぞ。」
「まだまだ,謎の部分は多いみたいだけど,ちゃんと辻褄が合うんでしょうね?」
「何度も言うけど,この謀略編で,赤い狐が喋った事は,ほとんど嘘だよ。特にこの第12話の話を
真に受けちゃだめだよ。」
「でも,このままずっと,この大佐を騙し通すのは,大変みたいね。」

「さて,いよいよ次章から,本格的にIF戦記の世界に突入だ。」
「とか言って,また,一年戦争に逆戻りするんじゃ無いんでしょうね?」
「ギクッ」


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