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赤い狐(勝利の塔編)第9話  投稿者:200076

連邦軍要塞守備隊と公国軍艦隊との交渉は,なんとかまとまった。
当初は,チャーターした難民輸送船50隻を護衛するため,要塞守備艦隊は戦艦4隻,巡洋艦16隻
を護衛につける,と主張して公国軍を混乱させた。
この申し出に公国軍は懸念を抱いた。避難民の護衛艦隊として地球に戻すには多すぎる。途中で引き
返し,要塞を攻撃中の自軍艦隊を背後から襲撃するための偽装では無いのかと疑ったのである。
この護衛艦の数を,より現実的な数字である,巡洋艦8隻という数まで連邦軍が譲歩したため,公国
軍も警戒心を解いたのである。というか,この8隻という数字は,たとえ,反転して攻撃してきても,
さほどの脅威とはならない,およそ最大の数字であった。
実際問題,これから要塞を防衛しなければならない連邦軍が,戦力を減らしてまで,何故護衛部隊を
送り出したがっているのかを,公国軍は図りかねていた。
そして,交渉の席における(そして盗聴の結果判明した)ゴトー大佐,シンクレア大佐,テクメシュ
中佐らの会話から,要塞を死守しようと考えている指揮官と,出撃してそのまま逃げだそうと考えて
いる一派(カストリ少将ら)とが存在しているらしい事に気付く。
ゴトー大佐はそういう軟弱な考えを持っている者が要塞内に残って結束を欠くのを恐れ,難民船護衛
の名目で追放しようとしているのだと考えた。

難民船の護衛に出す艦には,MSを搭載するつもりは無い。貴重なパイロットもそうである。
そして,要塞を水際で防御するのにMSさえあれば,巡洋艦はそれほど重要では無いのも確かである。
だが,巡洋艦8隻を失う事は連邦軍にとっては,戦術に柔軟性を欠く事になる。
戦艦・巡洋艦20隻は,戦闘の中盤で投入されると,攻略軍にとって非常に都合の悪い存在となる。
ならば,敵の手に乗った形で,この戦力の一部を要塞から引き剥がしておけば,攻略もより楽になる
であろうと考えたのである。

要塞(小惑星岩塊)の売却に関しても,共和国との話し合いはスムーズに進んだ。
共和国政権の中には,スギハラ卿の知人も多く,財務担当の官僚は,地球で卿の庇護を受けた人物で
あり,もしも,公国軍が『避難民の脱出を認めない。』と,言い出したなら,共和国が間で仲裁して
も良い。という話まで飛びだした。
さて,要塞の売却契約は終わったが,問題はその引き渡しである。何しろ,当の要塞は敵に包囲され
ている。
そこで,ゴトー大佐はこの件についても,包囲軍と交渉した。すなわち,要塞の岩塊=小惑星の所有
権は,共和国に譲渡したため,連邦軍がこの要塞から退去した(もしくは戦闘で敗北し,占領された)
場合でも,速やかに共和国へ引き渡し,要塞として今後使用しない事を約定させ,共和国にもその旨
を伝えた。
代金の支払い方法も取り決めた。つまり,小惑星の購入代金はチャーターした輸送船の借り上げ費用
として,サイド6の船主,運送業者に直接支払われる事とし,連邦軍は直接取り扱わない事にしたの
である。
小惑星の価格が,たかだか輸送船50隻程度のチャーター費用と等価ということに共和国側は疑念を
抱いたが,交渉にあたったゴトー大佐は,こう言いきった。

「この値段が安いとは,心外です。此処を包囲している公国軍が支払う事になる血の代価を考えれば,
まだまだ値段はつりあがると思いますよ。」

すなわち,公国軍が要塞攻略の為に犠牲を強いられた場合は,小惑星を引き渡す際にそれなりの見返
りを要求されるかも知れませんよ。と示唆したのである。無論,この話が包囲軍にも伝わり,要塞の
連邦軍守備隊が持つ徹底抗戦の決意を知らしめる為のパフォーマンスであった。
………………………………………………………………………………………………………………………………
「あれ?ゴトー大佐は,結局,徹底抗戦なんてするの?」
「まさか,偽装工作に過ぎないよ。」
「後は,うまく脱出できるかどうかね。」
「ここまで,いけば大丈夫だと思うけどね。それから,今回は,あまりにも間が開いたので,途中を
説明する形でまとめてみました。」
「初めっから,こう書いてれば余計な談義を入れずに済んだのでは?」
「ギク!」


 赤い狐(勝利の塔編)第10話 投稿日2000年7月11

宇宙要塞から難民船が出港して来る。そして,それに伍して8隻の巡洋艦も姿を現した。
船団は公国軍の包囲陣に開かれたわずかな隙間を抜け,背後の宙域へと移動し,公国軍艦隊の後詰め
に位置していた第二戦隊の『ワイヴァーン』の脇をすれ違う。

艦橋ではタモン提督が,艦の移動を命じていた。
もしも,この連邦軍艦艇の一部でも引き返し,要塞攻略中の公国軍の背後を襲う積もりなら,それを
許さない,という牽制の意味もあり,また途中まで監視してやろう,との意もあった。

だが,提督はこれらの艦艇が反撃して来る可能性は低いものと判断していた。
何しろ,巡洋艦の甲板には艦内に積み込められなかったと思しき資材が係留索で繋がれ,それらが,
ビーム砲塔の旋回や照準に支障を来しており,またMSの発進口の廻りにもいくらかの貨物がくくり
つけられており,とても「戦をする」準備をしているようには思えなかったからである。

「ですが,我々にそう思わせる偽装かも知れませんよ。」
副官はそう疑ったが,提督は言い切った。
「いや,それはあるまい。あの艦隊の司令はどうやら件のカストリ提督らしいし,どうも艦隊の配置
状況が『船団護衛』というよりも,『一刻も早く逃げ出したい』と言う感じに読める。」

「提督の予感ですか?」
「武人としての勘,かな。少なくとも一戦交えようとの気概を感じさせない。」
「では,安心して追跡しましょう。せいぜい後ろを脅してやりますか?」

「そうだな,艦隊直援のMS隊を接近させてみよう。これで,奴らの戦闘態勢が判断できる。」


ビームバズーカを抱えた09R2が,連邦艦隊に迫る。緊迫の一瞬!

艦隊からすぐさま通信が入る。

「わっ私は,連邦宇宙軍要塞守備第二艦隊副司令,カストリ少将である。公国軍司令官に問う。接近
中のMSは何の真似だ。我が船団に攻撃をするつもりか?直ちに進路を開放せよ。さもなくば………」


「さもなきゃ,どうするって言うんでしょうね?」
副官が笑うが,答えは出なかった。その通信に引き続き二つの連絡が入ったからである。

「こちら要塞守備隊,ゴードン中将である。公国軍艦隊に告げる。我が難民船団への不必要な干渉は
遠慮願いたい。護衛艦隊はともかく,避難船舶に乗船中の民間人へ無用な脅迫を行う事は,先に定め
た協定に反する行為である。この協定の遵守においては,公国軍将兵の諸君に紳士としてのふるまい
を要求する。」

「馬鹿者,避難民を脅してどうする?!ただちにMS隊を引き戻させろ!」
ズュートヴォルケ中将の叱責も飛ぶ。
「申し訳有りません,司令。どうやら後詰めを命じられて鬱屈していたパイロットどもが,はやった
ようです。ただちに後退させます。」


「どうだ,対空砲は動いたか?」
「いえ,ピクリともしませんでした。今,熱源探査の結果が出ます。」
「どれ,砲塔への撃力も充填された気配が無いな。」
「やはり,提督の予想どおりですね。」

「あるいは,もっと狡猾な奴が策を弄しているかだ。だが,俺には『赤い狐』の知謀は無い。艦隊の
追跡は適当なところで切り上げさせて,要塞攻略への布陣に戻すぞ!」
「は,MS隊を呼び戻します。」

両軍にとっての懸案事項であった避難民の脱出は完了した。
いよいよ,要塞『ピルツ』をめぐる攻防が始まった。


 赤い狐(勝利の塔編)第11話 投稿日2000年10月1日

「時,至れり!」
旗艦ローテンブルグより,全艦隊に対して発光信号が発せられた。
籠城中の連邦軍との休戦期間が終了した合図である。
もちろん,あらかじめこの時刻は全ての艦に周知されていたので,今更ながらではあったが,初陣の
兵達の士気を鼓舞するためには重要な意味を持つだろうと予想されたのである。
もっとも,却って緊張を強いた観もあり,必ずしも大成功とは言えなかったかもしれない。
それに,攻撃開始命令としても陳腐に過ぎた。実は,攻撃開始命令は既に20時間以上前に発せられ,
要塞への第一撃がとっくの昔に放たれていたのであった。

時をさかのぼること20時間前,チャーターされたリア船籍の輸送船が月の港を発した頃,ラグランジュ
第5点の暗礁空域から数十発のミサイルが発射されていた。
精密に軌道を計算されたそれは,最初の2分の大加速を終え,その後は微推力による長時間加速に切り
替えられ,ついには要塞に対する相対速度を秒速8km以上にまで上げていた。

発光信号を合図に,ミサイルの通過予想ポイントに居た艦艇が移動を開始した。

「敵がこの穴を攻略ポイントと考えて突撃してくれれば一番助かるのですが。」
「いや,それはあり得ぬよ。恐らく敵は要塞に引き籠もり,我々を水際で殲滅しようと考えているに違いない。」
参謀の楽観的予想をズュートヴォルケ中将は否定した。
「それにな,あんなあからさまな『穴』,どう考えても罠にしか見えぬよ。」

「ミサイル艇408号!回避が遅れているぞ。死にたいのか!」
「巡洋艦クングニール,待避速度が速すぎる。僚艦との激突を避けよ!」
だが,罠としても鮮やかさには欠けていた。

新米艦長(商船乗りとしてはベテランの彼らも,こと戦闘機動に関しては短時間の教習とシミュレーション
しか受けていなかった。)らが指揮する艦艇が辿々しく待避を完了した頃,それは到着した。

「衛星ミサイル,着弾します。」
遙か30万kmの彼方,ラグランジュ第5点から撃ち込まれた長径300mクラスの岩塊は,予定通り全弾が
要塞に命中した。要塞主砲の射程距離に到達した時点から激しい迎撃砲火が浴びせられたが,そもそも質量
兵器である衛星ミサイルにはほとんど効果は無く,わずかに数発が軌道を逸れて港湾施設その他標的への直撃に
失敗したに過ぎなかった。もちろん,ミサイルで迎撃すれば,さらに幾ばくかの衛星ミサイルの進路を逸らせた
であろう。しかし,最終突入時の衛星ミサイルは非常に高速であったため,そもそも有効な迎撃はほとんど間に
合わなかったのである。また幸運にも直撃を免れても,これだけの大質量物体が高速で激突した場合,付近への
影響も甚大であり,着弾点のみならず,周辺部の対空砲火も一時的に沈黙していた。
そしてさらに重要な事は,衛星ミサイル着弾の衝撃で発生した地震波の共鳴効果により埋設ケーブルが破断する
などの被害が発生し,要塞防備の要とも言うべき精緻な火器管制システムに致命的な損傷を与えていた。

「まさに『ダビデの投ぜし石礫,巨人を倒せり』だね。」
ズュートヴォルケ中将は戦闘開始時刻に大きな余裕が出来た事を最大限に利用していた。
大型の衛星ミサイルに廃棄寸前のMSの核融合炉(これは先の攻防戦で中大破し遺棄されていたた連邦MSから
いくらでも回収が可能であった)を数基ずつ搭載して,微推力で長時間加速し要塞に衝突させる。
練度に劣る兵で要塞を攻略するためには,いや例えそうではなくても非常に有効な手段であった。

「前衛艦隊,前進!全艦隊MS隊発進!」
ピルツ要塞攻略戦が始まった。
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「永らくお待たせいたしました『赤い狐(勝利の塔編)』が再会されました。」
「前回が7月11日だったから,およそ3ヶ月ぶりね。」
「色々あったんだよ。引っ越しの準備とか引っ越しそのものとか,引っ越し後の片づけとか………」
「そうね,8月26日からはドラクエとかもあったし。」
「そうなんだ,ドラクエが………おかげで,後かたづけがまるで進まなくて,未だに資料本は段ボール箱の中だな。」
「ところで,衛星ミサイルって,こんなに大きかったかしら?」
「映像で見る限り,もっと小さいよ。MSよりは大きいけれど,サラミス艦をへし折ってた画面(35話)では艦の
幅より大きい程度でしか無かった。もっともあっちは要塞守備の防空用で,今回のは要塞攻略用の特大サイズだから,
初代の設定とは違うと考えてもらった方が良いんだ。」
「むしろ,『5thルナ』に近いとか?」
「そこまで,巨大じゃ無い,と言いたいけど,5thの設定に寸法が無いので謎だね。」


赤い狐(勝利の塔編)第12話 投稿日 2000年10月23日

攻撃はセオリー通りに,無人ミラーボールの突撃から始まった。
これにはビーム砲塔が搭載されていない。
マニュピレータ基部付近に装備された対ビーム攪乱粒子を散布するのが主な任務であった。
精緻な長距離砲撃能力を奪われたとは云え,要塞の防空火器は未だ健在であり,特にMS
に対し致命的な破壊力を秘めたビーム砲台を無力化する事は,要塞攻略上の急務であった。
もちろん,ただ突っ込ませるだけでは芸が無いので,頭頂部の低反動砲を残し,要塞へ接地
した後は砲台としてMSを火力支援する任を帯びていたのであるが。

「うまく(衛星ミサイルの)着弾点にたどり着ければ良いが………」
参謀は「またズュートヴォルケ中将の心配性が現れたな」と思った。が,中将の悪い予感は今度
は当たった。

要塞へ接近中のボール群の中で閃光が煌めく。

「司令,やられました。機雷です!」
「事前観測は充分だった筈では?」
「いや,衛星ミサイル着弾時,破片が飛散した際に紛れて投射したに違いない。」
「被害の集計が完了しました。全120機のボールの内,42機が被撃破。32機が中・小破です。」
「残存機だけでは火力支援が不十分だな。」
「幸いというか,加速は完了していたので撃墜された機体の対ビーム攪乱粒子も要塞に向かい
浸透中です。とりあえず,ビーム砲台の無力化には成功しています。」

この状況の中でズュートヴォルケ中将は断を下した。
「出撃中の2個大隊を下がらせ,C装備に換装。支援任務にあたらせる。」

敵を前にしての装備換装,旧世紀の戦史の一幕が参謀の頭に浮かんだ。
が,それは考えない事にした。あんな不運な事故など起きる訳がない。

「それでは,要塞内に突入させる戦力に不足が生じますが?」
「それにC装備で支援任務を行えるほど練度が高い部隊となると………第8中隊と第14中隊,
第16中隊,第23中隊。いずれも突入部隊の中核戦力です。これを引き抜いた場合,非常に
苦しい戦いになりますが?」

「何のために第二戦隊を温存していたと思っておる?今頃,タモンの奴もじりじりしとるだろうよ。
奴の隊に突入の先陣を務めさせる。問題は無い。」

命令一下,09RIIを主力とする第二戦隊のMS隊が吶喊した。主武装がビームバズーカでは
無く,ジャイアント・バズーカ主体(一部機体はマシンガン装備)であったのは,要塞周辺に散布
された撹乱粒子により,ビーム兵器の効力が下がっているからに他ならない。

ワイヴァーン艦橋では,タモン提督が今までの鬱憤を晴らすかのように部隊を指揮していた。
「ミサイル全弾発射だ!味方が要塞に取り付く前に撃ち尽くせ!」
「しかし,射線上には発進したばかりの我がMS隊が居りますが?」
「大丈夫だ,奴らは後にも目がついておる!」
「そんな馬鹿な!」

「タモン親父の事だ,俺たちにかまわずにミサイルをブッ放すぜ!そろそろ回避した方が良かぁない?」
「そうだな,『パターンG』ってトコかな?逃げるか?」
「まぁ待て,ギリギリまであの『玉ッコロ』を引き付けてからにしようぜ。」
「しかし,アレはどうみても無人くさいぜ。」
「だな。有線っぽく無いから,自律プログラム型かな?分捕ってソフトを回収したいなぁ。」
「6時に閃光確認,ミサイル来るぞ!」
「ちぇっ,間に合わなかったか!」
09RIIは機体をひるがえし,後方から飛来したミサイルをかわす。
直進するミサイル群は,迎撃に出ていた連邦無人ボール編隊を粉砕しつつ進み,衛星ミサイル着弾の
クレーター周辺を炎で焦がす。

そのミサイル着弾の閃光に紛れて,第二戦隊のMS隊は要塞に取り付いた。一番乗りである。
後方から遅れて発進したはずの第二戦隊であったが,先陣部隊は連邦の迎撃機(無人のボール)との
交戦により進行が遅れていたのである。

「何て事だい,ウチの新米どもはボール相手に苦戦してるのか?」
「いや,そうでもないぜ。ソコソコやってるようだ。だが,ちょっとてこずり過ぎだな。」
「仕方ねぇな,一個中隊ほど送って,迎えに行くか?」
「いや,奴らを連れて中に入るのは御免だな。外で遊ばせておけば良い。ちょうど良い訓練だよ。」
「ようし,火力支援部隊が来るまでに,あそこの砲台を潰すぞ。小隊,続けぇ!」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ようやく,要塞攻略作戦っぽい話になって来ました。」
「今回はミッドウェーのパロディですか?」
「かなり本気で『14B装備から14C装備に換装中に敵に襲撃される』という話を入れようかと
悩みましたが,良く考えたらそういう状況では無いので没にしました。結局ここは『キスカ』だし。」
「復活した割に,更新が遅いのは何故?」
「いやぁ,地震のおかげで(熱対策で)立てていたPSが倒れ,メモカに記録していた冒険の書Lv99
が消滅してしまったから,リカバリーしてたんですよ。」
「やっぱり,ドラクエしてたんだ。」


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