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”赤い狐”第14話(アキロニア戦記編)

11月9日,アキロニアの大地を吹き荒れた嵐のような3日間が終わろう
としていた。
「司令が機動巡洋艦で脱出されただと?」
「はい。連邦軍の無線を解読してみたところ,宇宙艦隊司令部宛に追撃の
要請が出されているようです。」
「敵の情報か。大佐、どうされます。ハルトマン達の帰還を待ちますか?
それとも・・」
「いや、この分では、あまり待てないだろう。」
「わかりました。直ちに出港準備にかかれ。だが、準備だけだぞ。」

ここは,セバストポリ要塞の一角,連邦の空爆から強固なブンカーで守ら
れていた攻撃型潜水艦U−99の艦橋である。
「しかし,大佐。どこへ行くのです?ボスポラス海峡を通過出来るとは,
とても思えません。」
「なに,一応策は考えてある。それよりも,出撃中のハルトマン中尉達と
は、まだ連絡が取れないのかね?」
「は,連邦の大型陸戦艇を仕留めるのだ。といって出かけたきりです。」

時間は刻々と過ぎ,準備の整った僚艦は次々と出港していく。
「クレッチマー少佐のU−99の出港が遅れているようですが。」
「搭載機の帰還を待っておるのだろう。しかし,もうこれ以上は危険だ。」
「は,脱出命令を出します。我々もここの爆破準備を急ぎませんと。」
「脱出用の攻撃空母に貨物の余裕はあるな。よしクレッチマーには出撃機
の収容は我々がすると伝えろ。爆破の方も急がせろ。」

司令部からの命令に従い,U−99は黒海に乗り出した。
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「えーっ、アンリとルネは置いてけぼりなの?」
「基地にはまだ、航空輸送力が残ってるよ。そっちで脱出させるのさ。」
「でも、ハルトマン中尉達のMSは重量級よ、積めるのかしら?」
「大丈夫、輸送機は大型だから。それに一旦海に出ればなんとかなるよ。」
「そうだといいんだけど。」


”赤い狐”第15話(アキロニア戦記編)

ハルトマン中尉のM−07Sには,もう弾薬は残っていなかった。
相棒のクルツ曹長のM−03も同様である。
とても連邦の大型陸戦艇をどうこうという状態ではなかった。
おそらく,最大の激戦区に迷い込んでしまったのであろうか。辺り一面に
公国軍の機体と連邦軍の戦車の残骸が散らばり,激しい戦闘の跡を窺わせ
ていた。
もちろん,二人の機体にはビーム砲が装備されてはいたが,大気中での連
続使用は冷却に多少の問題があり,また発射後の機関出力の一時的低下は,
こういった乱戦では致命的な隙を生じる可能性があり,それに頼り過ぎる
ことは出来なかった。
「まさか,こいつで集束手榴弾やシュトルムファウストを使うとは夢にも
思いませんでしたよ。」
クルツ曹長の機体が抱えて狙いを付けている武器は,撃破された06Jが
装備していたらしいバズーカ砲である。あの鈎爪状の指でも,一応は物を
掴めるようにはなっており,マシンガンはともかく,バズーカなら十分に
操作が可能であった。
「よく引きつけてから撃てよ。残弾は少ないんだ。」
崩れ落ちたビルの残骸に隠れて61式戦車の一群を覗きながらハルトマン
中尉は指示した。射撃の腕も彼の方が上なのだが,さすがにM−07Sの
3本クローでは武器を扱えない。それに彼の特技はどちらかといえば格闘
の方である。
もともとは宇宙戦艦を相手に戦う武器であるバズーカ砲弾は戦車相手には
過剰な武器であり,車群の中心部を狙い撃つだけで,大部分の車両を破壊
あるいは擱座させることが可能だった。無論,難を逃れた車両もあったが,
それは,ハルトマン中尉がたちまち片づけた。物は掴めない手だが戦車の
上面装甲を貫くには充分過ぎる威力がある。
「そろそろ,潮時だな。陸戦艇をやれなかったのは残念だが,親父が心配
し始めてる頃だろう。」
「そうですね。クレッチマー少佐は待ってくれるでしょうが,海軍司令部
が脱出を命令したら,従わざるを得ないでしょうし。」
結局,戦車23両撃破という未公認の戦果をもって2機は黒海への道を辿
り始めた。
「しかし、この戦闘のさなか、坊主たちはぐっすり寝てやがる。将来は大
物になるぜ。こいつら。」
「なんか、優秀なパイロットの卵らしいですね。校長先生がご自分で発見
されたそうな。」
「冗談じゃないぜ、こいつらを戦争に出すなんて。コクピットなんかより
「ギムナジウム」,いや「リセ」の方がお似合いじゃないか。」
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「やっと、アンリとルネが出てくると思ったのに、ただ寝てるだけ。」
「寝る子は育つのさ。」
「ところで、予告した割には、このアキロニア戦記では06Jが活躍する
シーンが無いわね。」
「へっ、そんな、予告したっけ。」
「それに、DDとかも出てこないし。」
「うーむ、戦闘シーンは随分はしょったからなぁ。」


”赤い狐”第16話(アキロニア戦記編)

ボスボラス海峡はクリミア半島を脱出してきた公国軍艦艇の墓場となりつつ
あった。マルマラ海に居座った連邦海軍の大型対潜巡洋艦アルプスが対潜哨
戒機を次々と発艦させ,上空援護のない艦艇を次々と餌食にしていたのだ。
クレッチマー少佐の(実際は赤い狐が指揮している)U−99も海峡の入口
付近の海底に着底し,状況を見守っていた。

「U−87もやられたのか。」
「はい,確認できました。連邦軍の備えは万全のようですね。」
「万全な備えなんて物は無いよ。ただ,こっちの出方が迂闊だっただけだ。」
「とはいえ,今の状況ではどうしようもないのでは?」
「不利な状況を変えるのも頭の使いようだ。海底ケーブルは見つかったか?」
「はい,オデッサ−アレキサンドリア間の通信ラインを捕捉,アフリカ本部
との通信が可能です。増援を要請されますか?」
「違うぞ,通信はオデッサ基地へ送れ。”アレキサンドリアから航空部隊を
派遣して輸送機の脱出を援護させる”とな。」
「は???」
「そういう欺瞞情報を連邦に与える。うまく信じさせれば,上空援護の無い
対潜哨戒機は退いてくれる。」
「連邦軍は引っかかりますかね?」
「そうでないと困る,問題はオデッサでうまく連邦軍が我が軍の通信暗号を
解読してくれるかだ。」
「暗号深度を1ランク落としましょうか?」
「いや,仮にも基地司令代行宛の暗号だからな。そうだ,フェードラー大尉
が用意していた偽装暗号を使おう。多分アレは連邦に見つかるよう破壊せず
残してあるはずだ。」
「メモリーは消去されているのに,運悪くハードコピーが残っていたという
(ことにしてある)例の暗号ですね。了解しました。」

やがて,海中に騒々しかったソノブイの音響は減り,それに替わって,海上
聴音機が複数の制空戦闘機の爆音を捉える。
「どうやら,うまくいったようだな。」
「はい,後は海峡を突破するだけですね。」
「いや,対水上戦闘準備!連邦の対潜巡洋艦を叩く。」
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「ねぇ,連邦の大型対潜巡洋艦って,どうして空母って呼ばないの?」
「それはだ,単なる連邦のノスタルジーだ。昔から黒海で活動する航空母艦
は大型対潜巡洋艦とかヘリコプター巡洋艦とか呼んで,空母とは呼ばない慣
わしがあるんだ。」
「へっ,なぜ?」
「国際条約(*)で,”航空母艦と称する軍艦はボスポラス・ダーダネルス
海峡を通過してはいけない”というのがあるらしく,ロシア黒海艦隊の空母
は対潜巡洋艦とかを名乗っていたんだ。実質は空母なのにね。」
「核反応兵器を,核兵器と言うと平和団体が騒ぐので,反応兵器と呼んでる
マクロスの統合軍みたいなものかしら。」
「それは,ちょっと違うかも。」

(*)モントルー条約と言うらしい。詳しい資料が発掘出来ないので条約の
  制限がこのとおりだったかは不明。


”赤い狐”第17話(アキロニア戦記編)

ハルトマン中尉とクルツ曹長は基地を脱出する攻撃空母の最終便に辛うじて
間に合った。
乗り込んだ後,機体を固定する間もなく攻撃空母が発進した為,操縦席から
外に出る暇もなかった。もっとも,これはこれで幸いであった。
出発後に僚機4機で編隊を組んだ直後,基地に仕掛けていた気化爆弾が作動,
機体が大きく揺さぶられる程の衝撃波に襲われ,格納庫内はちょっとした騒
動になったのだ。M−07SとM−03も二人がバランスを取るよう姿勢を
制御したから助かったようなもので,もし無人であれば前方扉を突き破って
転げ落ち,機は墜落といった顛末となっていたかもしれない。

外部の状況が不明なのはとても不安なので,機内での補給の傍ら,有線にて
司令室との回線を繋いでもらう。
「中尉,そろそろタウルス山脈を越えるそうです。」
「そうだな,連邦空軍の動きが予想以上に活発らしい。気にいらんな。」
「アレキサンドリア辺りから,護衛戦闘機を廻してもらえば良いのに。」
「そういう余裕が我が軍にあれば,あそこで勝てたよ。それよりも,機外の
M粒子反応が強すぎるようだ。困るな。」
「でも,敵に見つかりたくないのは事実でしょう。」
「限度というものがある。これでは敵に接近されてもわからんぞ。」

突然,僚機が爆発四散した。
直上から急降下してきた連邦軍戦闘機の放ったロケット弾が命中したのだ。
編隊内に動揺が走る。だが護衛機の無い悲しさ,次々と火を噴いていく。
「くそっ,しんがりが喰われた!!」
「2番機から発光信号,”ワレ ソウダ フノウ”!!」

「なんて脆いフネだ・・・。」
「曹長,こいつはやばいぞ。脱出の準備をしておけ。」
「は,はい。補給作業は終わっています。良かったぁ。」
「よし,格納庫前方扉,かまわんからビーム砲で吹っ飛ばせ!!」

全滅した編隊から逃げ延びた2機はアナトリアの大地に立っていた。
「中尉。また海まで歩くのですか?」
「アレから助かっただけマシと思え。先は長いぞ。」
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「これまた古典的なパロディね。」
「好きなんだからしょうがないだろ。それにコレは近藤先生のマンガにも
使われたぐらい有名なネタだから,ここで使っても問題あるまい。」
「なにが問題ないのよ。ところで,攻撃空母もやっぱりフネなのかしら?」
「コロニー出身者にとっては,空を飛ぼうが宇宙を航行しようが,MSを
積んで,移動できる乗り物はフネだと思うよ。逆に水に浮いている船の方
に違和感を感じるかも知れないね。」
「そうね。小さなボートとかならともかく,巨大な船なんてコロニーには
無いから,地球に降りて初めて見たら驚くでしょうね。」
「初代でも,海に驚く子供がいたようにね。」
「でも,よく4機も攻撃空母が残っていたものね?」
「いや,攻撃空母は1機だけで残りは連邦から廬獲した輸送機だよ。」
「道理で簡単に撃墜されちゃったわけだわ。ひょっとして,この全滅の原
因は,やっぱり,赤い狐の欺瞞情報かしら。」


”赤い狐”第18話(アキロニア戦記編)

海上では連邦の対潜巡洋艦が炎上しながら沈み始めている。
「連邦の鯨は思ったより大きかったようだな。」
「大佐,これで海峡通過は問題無いのですが,ハルトマン中尉達との合流は
どうします?基地の輸送機最終便はどうも全滅したみたいですが……」
「とは言っても彼らが死んだとは思ってはおるまい?少佐」
「あの悪ガキどもが,そうそう簡単にくたばるわけはありません。」
「そうだな。最悪の場合,機体を失ってもなんとか帰還するだろう。」
「ええ,ただ今度は,シマール兄弟を連れています。その点が……」
「いや,ある意味,あの子達が一緒で良かったかもしれんな。」
「大佐。それはどういう意味で?」
「それはな。クレッチマー少佐。軍の最大の機密だ!!」

「はぁ。」
「とりあえず,艦をキプロスに向けてくれ。そこで彼らを待つ。」
「はい。ところで,艦内に積み込んだアレはどうするんです。一応,整備は
させてますが……?」
「宇宙(そら)に持って帰るつもりだ。ただ,当分使う予定はないがな。」
「それで,安心しました。では,U−99は地中海に出て,キプロスに向か
います。」

さて,その頃宇宙では,公国軍機動巡洋艦カリマンタンは奇妙な活動を始め
ていた。高度300kmの軌道上で,戦没した低軌道用宇宙ステーションの
残骸や,漂流戦艦の残骸と,艦をケーブルで繋いでいたのである。
「やれやれ,いつでも切り離せるとはいえ,機動巡洋艦の名前が泣くぜ。」
「しかも,このケーブル。沈んだコロニーから拾って来た物だぜ。なんでも
ミラーをつるしていた代物らしいとか。まったく「赤い狐学校」は廃物利用
が得意なんだから。」
「なに。リサイクルが宇宙の鉄則なのさ。」
「おい,こっちの巡洋艦はすぐに切り離せるようにセットするんだ。」
とか言いながら06Fで作業を進めていく。
ZKは本来このように使われるのが「あるべき姿」なのであろう。
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「作戦は終わったのに,話はまだまだ続きそうね。」
「うーん。そろそろ,物語を収拾したいんだけどね。なかなか,うまく話が
繋がらなくて。」
「ところで,カリマンタンが始めた「奇妙な活動」というのが,赤い狐の次
の作戦の布石になるのかしら?」
「まるきりの無関係でもないけど,あんまり関係ないよ。」
「次の作戦もやっぱり,廃物利用の貧乏たらしい作戦になるのかしら?」
「違う。低予算の割には壮大なスケールの作戦と呼んでくれ。」
「でも,別のところでは,やっぱり騙された誰かが負担するのよね。」


訂正告知文(実は言い訳)

「しまった。クルツ伍長がいつの間にか,曹長になってる。」
「ほんと,そうね。いつの間に出世したのかしら。」
「クラウスとシマール兄弟を救出したからだよ。って,大嘘をつくのは止めて,どうもすみません。」
「なんで,こんなことになったの?」
「実は,アキロニア戦記は当初は赤い狐は登場させない予定だったんだ。」
「そんなぁ,じゃあ輸送艦を落とす作戦は誰がやる予定だったの?」
「そもそも,アキロニア戦記はセバストポリを脱出した潜水艦が無事脱出するまでの話だったんだ。」
「じゃあ,それまでの話は後から追加したものなのね。」
「急遽,赤い狐を登場させることにして,彼が立案した作戦をでっち上げた。そのときにクルツを新兵
として登場させたので,伍長に格下げしたんだ。」
「でも,その時に最初に書いていた本来のアキロニア戦記も直したはずでしょ?」
「直したさ。そして……。」
「そして,どうしたの?」
「年明け早々にHDDがこわれたんだ。」
「バック・アップはしてあったんでしょ?」
「そう,直すまえのがね。」
「それを,そのままつかっちゃったのね。」
「一部手直ししてね。これで何回目の訂正になるんだろう。読者の皆さん。混乱させて申し訳ありません。」
「どうせ,ほとんどの人は気づいてないわよ。」
「だからぁ,皆が許してもこの私が許さないのだ。」


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