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”赤い狐”第23話(アキロニア戦記編)

カエサレアの沖合50kmに2隻の潜水艦が浮上した。いずれも公国軍の
U型潜,U−103(シュッツェ少佐)とU−107(ヘスラー少佐)で
あり,それぞれ3機のDD(デュプレックス・ドライブ)仕様ZKを発進
させた。6機のZKは海中に飛び込むと腰部に備えられた浮袋を膨らませ,
脚部の推進機で陸上へと向かう。
それを確認した母艦は潜水しつつ,対地ミサイルを発射し,ZKの上陸を
援護する。陸上からは対潜ミサイルが発射されているが,奇襲を受けての
反撃であり,有効な打撃とはなっていない。しばらく経って,対潜哨戒機
が来援したが,全てZKに撃墜されてしまった。DD仕様のZKは連邦軍
に(06M)すなわち,ZKのマリーンタイプと誤認されることが多く,
そのために,必要も無く対潜攻撃機を出撃させ,簡単に返り討ちに会うと
いう事例が多く,今回もその例に倣った結果を生んだ。すなわち連邦軍が
いかに,水陸両用MSによる強襲上陸攻撃を恐れていたかを証明する良い
見本であると言えた。そして,上陸したDD仕様ZKは連邦軍のミサイル
基地を短時間の内に制圧し,そこへ更に2機のDD仕様ZKが巨大な貨物
を持ち,M−07Sに護衛されて上陸してきた。U−99から陸揚げされ
たその貨物こそ,本作戦の目玉であった。
それはオデッサの基地から運び出された大陸間弾道ミサイルであった。
ZKを追って上陸して来た技師達の指示に従って,ミサイルが設営されて
いく。最初に上陸した6機のZKのうち2機は武装を解除して,ミサイル
の設置を手伝う。
4機のZKの効率よい働きにより,作業は短時間の内に完了した。
秒読みが開始され,作業を終えたZKは技師達の乗ったボートを護衛して,
海へと帰っていった。
そして,4基のミサイルは東の空に向かって発射された。

「オデッサとマドラスの連邦軍基地は,今頃は大パニックでしょうね。」
クレッチマー少佐がにやりと笑う。
「まさか,起爆弾頭の無い超軽量のミサイルを衛星軌道に打ち上げただけ
とは思うまい。それより,仕掛けは大丈夫だろうね?」
「万全です,大佐。ポートサイドの連邦軍があそこに駆けつける時刻には
気化爆弾がドカン!!です。」
「そして,諸君らは悠々とスエズを渡って紅海へ出られるという訳だ。」
「その前に,大佐とお別れしなければならないのが残念です。」
「また,すぐに逢えるさ。」
と,答えながら,男も2ヶ月以内に再会できるとは予想もしていなかった。

その頃,上空の衛星軌道上では,ワルメルから大気圏突入用のカプセルが
分離し地上を目指していた。
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「また,『気化爆弾でドカン』ってやるのね?マンネリじゃないかしら。」
「いや,別に普通の軍隊を相手にするのなら,ただの時限爆弾でいいんだ
けどね,MSを率いる部隊を相手に罠をはるには,最低限でもこの程度の
威力の爆弾が必要なんだ。使えればホント,核を使いたいよ。」
「危ない発言ねぇ。ところで,ワルメルのカプセルって”コMサイ”って
どうして呼ばないの?また,著作権のからみなの?」
「今まで隠していた訳じゃないけど,実はワルメルはMサイ級の巡洋艦じゃ
ないんだ。だからコMサイは,積んでない。大気圏突入用のカプセルと呼
ぶのが,正しいのさ。」
「まさか,また怪しげなオリジナル戦艦をつくってるとか?」
「それは無い。少なくとも,艦の名前は捏造しても,新型艦艇を出すほど
のオリジナル設定はする予定は無いよ。」


”赤い狐”第24話(アキロニア戦記編)

大気圏突入カプセルを射出したワルメルは乗組員達が撤収の準備を始めて
いた。巡航船の曳航してきたコンテナへの資材の搬入が進んでいる。
ワルメルは元々,落下するコロニーを阻止しようとして,護衛の公国艦隊
のZKに撃破された連邦軍の巡洋艦であった。
しかし,中性子弾頭による艦橋部分他の破壊以上の損害はほとんど無く,
地球上空の軌道を周回していたのを,公国軍諜報部が発見,補修を加えて,
対地上監視任務につけていたのである。もちろん,地上からは戦没艦以上
には見えないように,外装はそのままにしてある。
核融合炉は無傷であったが,構造強度が加速には耐えられないと判断され,
極軌道を周回し,地上を偵察する任務が与えられ,ワルメルと呼ばれる事
になる。主に,地上の連邦軍の動きに目を見張らせ,また地上部隊同士の
レーザー通信を中継する等の情報戦に働きを見せていた。
しかし,地上における軍事バランスの変化に伴い,この秘密基地の価値は
半減していた。いや予想される連邦軍の対宇宙一大反攻作戦の前に撤収も
やむを得ない事態といえた。もちろん,撤収に際して,彼らはいくつかの
置きみやげを用意しておくことも忘れてはいなかった。

ワルメルのカプセルは無事,ポートサイド近郊の仮設飛行場に着陸した。
直ちに,ZKが運河の脇で座礁しているタンカー(実は偽装で,内部には
各種燃料タンクが隠されている。)に誘導する。

「燃料の補給が終了し次第,発進します。この機会を逃すとカリマンタン
は地球をもう一周しなければなりませんの。」
カプセルの搭乗口からパイロットが時計を示しながら説明する。
大佐,シマール兄弟,そして”クラウス”のパーツを抱えた技術者一同が
急いで乗り込む。
外ではZKがタンクのバルブからホースをのばし,機体の給油口へと繋い
でいる。
「機体表面の温度は下がりきってはいないぞ。注意しろ!」
作業主任が的確に指示を出し,燃料補給が始まる。

機内では別の作業が始まっていた。
「兄さんは風邪気味で疲れてるから,僕も手伝うよ。
『レイラ少佐がどこに居るか』の大まかな所はクラウスに教えてもらえば,
僕にだって少佐をつかまえられるもの。」
「大丈夫かなぁ。宇宙で迷子になるのはイヤだぞ。」
「大丈夫ですよ,アンリさん。誘導はアンリさんの感知を主体に計算する
予定です。ルネさんの感知はあくまで予備です。」
「なんだ,僕は予備なの?」
「えぇ,今度はアンリさんも海に落ちるなんて事はないでしょうしね。」
「クラウス!!」「クラウス?」

「クラウスと操縦系統の接続作業,完了しました。」
「シマール兄弟とクラウスとの脳波系接続,完了しました。」
「カプセルの燃料補給作業,完了しました。」

「時間は間に合うね?」
「ええ,5分の余裕がありますわ。」
「では,発進。あ,その前にクレッチマー少佐にお礼の発光信号を頼む。」

「艦長,大佐のカプセルから発光信号です。文面は……」
「良いよ,もう読んだから。こっちも出港だ。ZKの撤収を急がせろ。
それから,タンクはもう使わん。景気良く吹っ飛ばせ。」

U−99がZKの収容を急いでいる時,ワルメルのカプセルは東の空に向け
飛び立っていった。
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「ようやく,地球脱出ね。でも,シマール兄弟とクラウスを使った仰々しい
操縦システムは,一体何なの?」
「ネタバレになる可能性があるから,あんまり詳しく書かないけど,重要な
ヒントを出そう。
1.初代ガンダムでアムロが大気圏突入をした時,一時的に通信不能な状態
になった。
2.厳然たる物理法則では,化学燃料ロケットで,衛星軌道に物体を乗せる
場合に,最終的に軌道に乗せる物体の6.4倍の質量の燃料が必要である。
この2点だ。」
「????わかんないから,別の質問よ。カプセルのパイロットって女性の
ようだけど,発進の準備作業の間,赤い狐はナニをしていたのかしら?」
「さぁ?ここんとこ,品行方正だったからねぇ。息抜きしてたのかな?」


”赤い狐”第25話(アキロニア戦記編)

「前方に積乱雲です。」
「ワルメルから報告のあった熱帯低気圧だな。うまく上昇気流に乗れれば。」
「ええ,ですが雷雲が発生しています。通過時に,かなり揺れますわ。」

カプセルが接近するに従い,ゴロゴロと鳴り響く音が窓越しに伝わる。
「連邦の秘密兵器か?」
「うろたえるな,これが地球の雷というものだ。」

だが,運悪く雷撃がカプセルを襲う。
コクピット内が瞬間的に停電し,直ちに復旧する。
「大丈夫か?異常はないか?」
「操縦系統はトラブルありません。」
「動力系統も生命維持システムも異常なし。」
「クラウスの回路に異常あり。しかし,メモリーは10秒毎にバックアップ
されてますから問題ありません。20秒で復旧させます。」
「なんだって!!クラウスに?アンリは大丈夫か?」

「えーと,のびてます。命に別状は無いようですが?」
「まずいな。正気を取り戻させても,艇の誘導は無理かもしれんな。」
「気を失ってますし,先日来の風邪の影響も馬鹿に出来ません。アンリの
誘導はあきらめるしかないでしょう。」
「わかった。
よし,ルネ。君が活躍する時だ。アンリはあの通りのびている。今までの
練習通りにやれば,必ず出来る。クラウスの指示に従って,レイラ少佐を
見つけるんだ。他は何も考えなくていい。出来るね。」
「はい。やってみます。」

「大佐,あと310秒で,カリマンタンとのランデブー高度に達します。
(ルネ君のサーチ&クラウスの操縦)に切り替えます。」

さて,公国軍機動巡洋艦カリマンタンでは,
「これより,カプセル収容に大気圏内に再突入します。
緊急機動に対し,各個に対衝撃固縛。よろしいですね!」

カリマンタンは2,000kmの長さのケーブルではるか上空の軌道上の
錘(戦没艦やら軌道ステーションの残骸)と繋がったまま,更にケーブル
を伸ばし,軌道高度を下げ,大気圏に突入した。
強力なケーブルが錘と機動巡洋艦をつなぎ止め,ひとつの天体として軌道
速度を有する事を可能としていた。
大気圏に突入したカリマンタンの速度は落ちる。しかし,ケーブルを繰り
出す事で錘の部分は更に高度を上げ,全体としては第一宇宙速度を維持し
続けていたのである。

レイラ少佐は艦を会合予定高度にまで下げると,必要となるかも知れない
緊急加速に備えた。もはや,彼女に出来るのは待つことだけである。

「大佐のカプセルを確認。前方約5km。相対速度差は約300m/秒。」
「緊急制動,可能な限り速度をそろえて頂戴。大佐達の回収作業も急いで
下さいね。」
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「えーと,質問だけど,」
「聞かれる前に答えとこう。ケーブルでおもりと機動巡洋艦を繋いだのは
『テザー衛星』と言うアイディアだ。推進剤をまったく使わずに軌道高度
を変える方法だよ。」
「そうじゃなくて,クラウスとルネの方は?」
「大気圏突入の最中の宇宙船や,それに匹敵する速度と高度を飛んでいる
飛翔体は,電波で通信することが出来ないんだ。」
「それにしても,大げさね。」
「再突入カプセルが単独で大気圏離脱能力を持っているとは思えなかった
ので(質量比7.4の壁),レイラ少佐の方が迎えに降りてくる話にした
のさ。ところが,機動巡洋艦の方も,地上施設の支援無し(というかあの
巨大なブースター無し)に大気圏離脱が出来そうも無い。それで,折衷案
として,巨大なテザー衛星と化したカリマンタンで,限界高度まで上昇した
カプセルを収容するために降りてくる。しかし,両者の通信は不能。」
「それで『大佐ラブラブのレイラ少佐のハート』をルネが見つけだし,その
位置までクラウスが誘導するという作戦になったわけね。」
「仕掛けが大がかりになった割に,やってることはただの地球脱出劇だ。
しょぼいよなぁ。」
「ホント,カプセルが『大気圏内では,エアブリージングで飛べる』って
設定にしてれば,何でも無かったのに。」
「ギク…」


”赤い狐”第26話(アキロニア戦記編)

カプセルを回収したカリマンタンはケーブルを巻き取り,軌道高度を上げる。
その間にも,途中に爆発ボルトで繋いであった巡洋艦を切り離す。
下部のバラストを失った形になったカリマンタンと錘は,全体として上昇し,
大気圏を離脱する。

外気の影響を考慮する必要がなくなり,ZKが船外に出て,曳航されている
カプセルの収容作業を始める。もちろん,ケーブルの巻き取りは続いている。
ZKのパイロット達は,艦に置いて行かれないように注意しながら,作業を
進めた。

「お帰りなさい。大佐!」
彼女は人目もはばからず,男の胸に飛び込んで行くつもりであった。
しかし,艦橋に現れた良人は,既にその胸に金髪の少年を抱いていた。
「やあ,レイラ。アンリ君がなかなか目を覚まさなくてね。医務室はどこだ
ったかな?」
「もう,あなたったら。」

「艦長!お取り込み中のところですが,連邦軍の艦隊です。後下方から最大
戦速で接近中,艦種は戦艦1,巡洋艦3,おやぁ,生意気にもGMを出して
来ました。MSは15機。相対速度から計算して,2分でGMと接触。
敵艦隊との接触時間は6分後です。」
「技術班。クラウスのシステムを5分で組み上げろ。それまでは白虎隊で,
持ちこたえてくれ。」

「ヒュウガ大尉であります。大佐,ご安心下さい。連邦軍のMSなぞ蹴散
らして御覧にいれますよ。」
「これは,頼もしいな。だが,君らとて,対MS戦闘は未経験のはずだ。
敵を侮るなよ。」
「判っております。幸いにも,我が隊には,大佐のもとで対MS戦闘の訓練
を受けた者が何名もおりますので,不安はありません。」

確かに2分後に始まったMS同士の戦闘は,白虎隊の圧勝であった。
ヒュウガ機(白い06S)と2機の06FSに率いられた9機の06Fは
数に勝る連邦部隊を圧倒し,3機のGMを撃破,4機を中破,さらに3機を
小破させた。味方の損害は中破1機,小破2機,さらに中破した敵の2機を
捕獲しており,両軍の練度の違いをあからさまに示す結果となった。
残った5機のGMは,損傷した味方機を庇いつつ母艦への帰路をとった。

そして,連邦軍艦隊が接近して来たとき,カリマンタンではクラウスの
システムの構築が完了していた。そして,もちろんルネの準備も整っていた。
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「ねぇ,2,000kmもの長さのケーブルって,もの凄い分量になるんじゃ
ないかしら。一体どこにしまっておいたの?」
「そんなに凄い量とも思えないんだけどな。よし,計算してみよう。」
「ケーブルってどのくらいの太さのつもりなの」
「宇宙世紀で,材料工学が進歩してるものとして,直径50cmくらいを想定
していたんだ。それで長さは2,000kmだから,約20万立方mだね。
(隙間は無視したとして)」
「それって,もの凄い体積じゃないの?」
「ところがカリマンタンには簡単に収まるんだ。45m×45m×100m
の大きさ以下だからね。ちなみにエルメスは全長85m全高47m全幅不明
(H.J.ガンダムメカニクス)だから,それほど変わらないサイズだよ。」
「エルメスってそんなに大きかったのね。」
「例によって,全備重量は300t以下なのにね。」
「ところで,エルメスって連呼して,S社の著作権は大丈夫なのかしら?」
「コレばっかりは大丈夫。エルメスの商標権はS社には無いのさ。フランス
の馬具屋(今はバッグ屋)が持っているわけだ。」 <つまんないシャレ
「次回はいよいよ,というか,ようやくアキロニア編の最終回ね。」


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